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日本の経営者はコロナ便乗リストラしている場合じゃない

世界の支配層(の代理人たち)が道徳を唱え始めたほど世界は危機に瀕している

■国連は17の持続開発目標SDGsを掲げる

 国際連合という組織は、United Nationsなのだから、第二次世界大戦時の連合国という意味であり、元枢軸国の日本からはカネを取るだけの胡散臭い機関だと、私はずっと思ってきた。国連など、「発展途上国不満ガス抜き機関」であり巨大な偽善機関でしかないと私は思ってきた。

 しかし、その国連も、最近は言うことが、雲をつかむような綺麗事ではなく、地に足がついた真摯な具体的なものになってきた気がする。

 国連は、2015年の9月25日から27日に、「国連持続可能な開発サミット」を開催し、その成果文書として「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。通称「2030アジェンダ」だ。

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/

https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html

 国連が2030年までに実現させたい17の目標SDGs(Sustainable Development Goals)は以下のとおりだ。

1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
5 ジェンダー平等を実現しよう
6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう

 この簡潔な文言の17目標には、「2030年までには世界改革の目途をつけねば!」という危機感と改革への熱意があふれている。

■世界の未来シナリオは道徳的世界をめざす

 このように、国連の活動や世界経済フォーラム会長クラウス・シュワブや「欧州を代表する知性」のジャック・アタリの言論から判断すると、彼らの背後にいてほんとうに世界をリードする人々は、ひょっとしたら悔い改めたのかもしれない。

 彼らが、彼らを含む人々の私利私欲にまみれたままに世界を放置すると、自分たちの存続も地球や人類の存続も危ういと、やっと認識したとしたら、私たちの未来にも希望がある。

 彼らは、強欲資本主義ではなく株主資本主義ではなく、創意工夫研究開発によって世界経済を豊かにする起業家スピリットに富んだ人々が作る資本主義をあらためて追求することにしたようである。

 企業人に対しては社会的責任の自覚を促す。政治家や官僚に対しては税金を企業人とわけあう補助金ビジネスばかりやっていないで、政府にしかできない公的サービスの担い手としての自覚を促す。個人には主体性と当事者意識を持って世界の変革への参加を促す。まさに、「グレートリセット」だ。

 そんな世界情勢であるが、知人からコロナ危機を口実にする「便乗倒産」のローカルな事例を耳にした。経営者が自分の資産を守るために、前々から会社経営から身を引きたいと思っていた。このまま経営していると、自分の資産が目減りする。新しいビジネスを創意工夫する気もないし、それができる人材発掘をする気もないし、後継者や会社の売却先を本気で見つける気もない。そこにコロナ危機が起きて収益が減った。コロナ危機を理由に倒産すれば、従業員からも恨まれずに済むので倒産したというわけだ。

 「便乗倒産」があれば「便乗リストラ」もあるのだろう。コロナ危機というピンチをチャンスに変えて未来を拓く気概もなく便乗リストラで誤魔化そうとする類の経営者は、もともとが創意工夫研究開発によって世界経済を豊かにする起業家スピリットなど持ち合わせていなかったのだろう。

 これからの時代は、そういう人間は企業経営に関わってはいけない。時代遅れです。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

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